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仕事現場の実情は…

最初に登場していただく方は、介護老人福祉施設の副施設長で、社会福祉士とケアマネジャーの資格を持ち、この道22年間働いている、Y.Nさんにこれまで経験してきた中から、実感していることを語ってもらいます。

普通の職業と比べて、仕事はきついのですか?

いいえ、それは誤解です。
“きつい”と言うのはあいまいな言葉です。
感じ方は人それぞれなので、そのように感じる方がいることも事実です。
ただ、私の経験から見ると、そのように言う方の多くは、他の世界を全く知らないようです。
一般企業の職場を経験してきた方のなかには、「思っていたほど大変な仕事ではないですね」と言う方もいます。
福祉・介護のより一般企業のほうが、精神的にきついことはたくさんあるのではないでしょうか。

また介護業務は、体力的にきついと言われますが、外回りの営業マンや、工場などで常に立ちっぱなしの仕事をしている方たちと比べて、肉体的、体力的にきついとは言えないでしょう。
最近では特に若い人の中には、アトピー性皮膚炎の人が増えていますが、福祉・介護の現場でも、排泄介助や、入浴介助など、常に手を洗い手指の消毒を行なうため、アトピー性皮膚炎でかなりつらい思いをしている人も多くいます。
ハンドクリームを塗ったり、手袋をしながら一生懸命仕事を続けています。
また、福祉・介護の仕事は「腰痛が職業病」と言われていますが、これも正しく理解されていません。
たしかに腰痛持ちの職員は、少なくありません。
しかし、これはこの仕事に限っているわけではありません。
肉体を使う仕事だけでなく、事務系の仕事をされている方にも多く見られ、一種の現代生活病だと思います。
例外的な方もいますが、ある程度の予防と改善で防ぐことは可能です。
腰に悪い生活習慣を送っている人ほど「腰が痛い」と言っていませんか?
ある程度の年齢なると、腰痛という現代病が現れるものだと考え、その対応する必要があるのです。
体を使う仕事する人は、スポーツ選手と同じと考え、健康管理も仕事のうちなのです。

私も若いころから腰痛に悩んでいます。
いい仕事するための義務だと考えて、それを克服するために、日頃からジョギング水泳などのスポーツで、腹筋力や背筋力の維持を欠かせません。
どんな仕事も言えますが、肉体的にも精神的にも健康でなければいい仕事ができません。
多少の辛さに増してもそれを上まわる「やりがいと感動」があります。
最近の福祉・介護の世界では、あらゆる意味で厳しくなっているのは事実ですが、しかし、日々のやりがい、1日の充実感や利用者の笑顔には、嫌なこともすべて吹き飛ばすほどの魅力とパワーがあるのです。

「汚い仕事」と言われていますが?

それは、排泄介助入浴介助などの面からだと思います。
しかし、福祉・介護の仕事は、人間の生活すべてのことについて、お手伝いさせていただき、自ら学んでいく仕事です。
ですから、当然食べることから排泄することまでにかかわる仕事なのです。
自分のこととして考えてみてください。
全裸を見られたり下の世話をしてもらうことが、どんなに恥ずかしい気持ちになるか、しかし、それは誰かに手伝ってもらわなければならない状態なのです。
その気持ちを考えると「汚い」なんて言葉は失礼だと思います。
人間誰でも歳を取り、最終的には誰かの手を借りなければならない時が来るのです。
自分の排泄物を汚いと思う人がいますか?すべては人間の生きていくための自然な営みなのです。
「食べる」「排泄する」という人間の営みが、それだけで「喜び」につながる重要な行為だからです。

しかし、歳を取るにつれて、食事をしたり排泄する機能が衰えてきます
全体的な筋力の低下によって、飲み込む力や出す力が弱くなってくるのです。
いずれも人間の生活にとって欠かせない行為です。
食が細い人の食欲が増進したり、便秘の人に排便が見られたとき時などは、ご本人が喜ばれることはもちろん、ケアしている私たち職員もうれしく感じます。
人間のあたりまえだと思っていた行為が、喜びにつながり、職員もうれしくなってくることは楽しいことだと思いませんか?そうは言っても、私もこの仕事に就いた時には戸惑いもありました。
例えば、施設特有の臭いです。私が就職した25年くらい前は、まだ施設の設備が整っておらず、施設に入ると何となく臭いがしたものです。
でも、人それぞれの体臭や口臭があるように、建物の中にも生活臭は大なり小なりどこにでもあるのです。
自然とそれがその施設個性のように感じられるようになりました。
しかし、現在では空調も良くなりましたので、ほとんど気にならなくなっています。

給料が安いと言われていますが?

給与のことは、誰でも気になりますね。
テレビやマスコミで、福祉・介護の業界で人手不足が報じられるつど、その原因の一つに給料が低いことがあげられます。
実際の数字を示して、一般企業の平均年収と比べ、この業界の給料が低いとされています。
しかし、一般企業の平均給与の内訳が表記されているわけではなく、その中身はかなり曖昧なのです。
私は、一般企業と比べる際には、年齢や学歴、また事業所の規模やその所在地などの条件をそろえて比べれば、福祉・介護業界の給与とそれほど差が出ないのではないかと思っています。
最近では、デフレが進み多くの企業の給与が上がっていないこともあり、福祉・介護業界の給与が特に低いことはないと考えます。
ですから、福祉・介護は「ボランティア精神」「奉仕の心」で、低い給料で我慢しなさいというのは、全くの誤解なのです。
私の給料と他の分野で働いてる友人たちと比べても大きく違うと感じたことはありません。

ここで、厚生労働省の発表されている他業種の初任給平均賃金※によると大学・大学院卒の場合は233,600円、高専・短大卒=214,170円、高卒=200,900円に比べ、福祉・介護業界の場合は大学・大学院卒=233,500円、高専・短大卒=230,450円、高卒=191,250円と大幅に低い水準でないことが分かります。
※平成23年賃金構造基本統計調査より作成、いずれも、男性の場合です。なお、高卒の場合は初任給ではなく他の卒業者の年齢20~24歳に合わせてあります。しかし、初任給は悪くなくても昇級などのめんから考えると、一般企業とは違って、福祉・介護の事業所はその多くが営利目的ではないため、残念ながら昇給率はあまり高くありません。何となく年数だけを重ねてしまうと、何年か後には、入職当時は同じくらいの初任給だったのが一般企業の人と、給与額に大きな差がついていたなんてことになりかねません。
この業界に長く勤めようと考えている方は、特に、キャリアアップを目指すべきです。
福祉関係の資格、介護福祉士社会福祉士ケアマネジャーなどの資格を取得して、その組織のリー ダー(主任、課長等)、そして施設や事業所の副所長や所長へとステップを踏んでいくことが必要です。
これは、ただ自分の給与の面のためではなく自分が理想とする福祉・介護に近づくためにも大切なことだと思います。
役職に就けば、それまでと違う仕事もしなければならないので、苦労や忙しくなると思いますが、その分喜びも増え、さらにモチベーションが上がってくることでしょう。

また、この職業には男女の差がありません。
チャンスは誰にも平等にありますので、努力次第で管理職に就くことができます。
一般企業に比べると、女性本来のやさしさや気遣いが大切な福祉・介護業界は、女性のパワーが活かせる絶好の職業です。
ここで、福祉・介護業界の最近の動向を話しますと、2000年に介護保険が導入されましたが、それ以前に比べ、給与や運営面について厳しくなったのは事実です。
介護保険導入以前の制度(措置制度)からの大展開であったため、その後の運営状況が全く把握できなかったため、業界全体に不安感が広がっていたのでした。
この頃から、この業界ではあまりなじみのなかったパート雇用が進み、給与面も抑えられる傾向が各事業所に見られました。
しかし、現在は、介護保険制度の導入から10年以上が経ち、こうした混乱も落ち着いてきました。
また、2009年には介護報酬が3%引き上げられ、さらに同年の10月から「介護職員処遇改善交付金」が導入されました。
これは、支給要件を満たした介護サービス事業者に対して、介護職員の賃金改善を図るための交付金です。
手続きの複雑さもあり、事業所の現場でではやや混乱と疑心暗鬼な部分もありましたが、この制度を申請・導入した事業所は、月給で1万円前後は上がっています。
今後も給与は上がっていくばかりで下がることはない職場であることは間違いありません。
またよく言われるのが、福祉・介護の職場は離職率が高いということがありますが、これも、厚生労働省の発表されている「平成23年上半期雇用動向調査結果概況」では産業全体では8.2%に比べ、医療・福祉分野では10%で、ほぼ平均並みで、決して離職率が高い訳でではないのです。
最近では以前に比べ離職率が低くなっていると言われていますが、こうした傾向は多くの業界と同じなのです。

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