仕事現場の実情は…その5

福祉・介護の現場…仕事の魅力と現実

◎「対利用者」について考えることは

福祉・介護の仕事は大きく分けると、目の前のサービス利用者に対して、身体面、精神面、生活面などを深く考えていくミクロ的な活動と広く社会や制度に訴えるマクロ的な活動に分けることができます。

サービス利用者について考えるとは、まさにこのミクロ的な部分で、言い換えれば、この仕事の最も重要な深部を追求していくこと、いえるのではないでしょうか。

高齢者やハンディキャップを持った方の、わずかに動いた顔の表情や発信した簡単な言葉から、その深層を考察する、というような、職員のセンスや感覚的な能力を磨いていかなければならないともいえるでしょう。

◎「対同僚」につて考えることは

どの職業・仕事についてもいえることですが、特にこの仕事は、同僚との連携で成り立っています。

交代勤務もあるので、きちんと引継ぎ連携ができないとサービス利用者に対してより良いケアができません。

しかし、職員の悩みは、実は同僚との人間関係であることが多いのです。

“好き・嫌い”といった、人間の原始的感情を排し“目の前の利用者のため!”を優先先に考えることが働き手の責任です。

◎「対自分」にいて考えることは

イライラしたり、頭にくる!といった感情は、人間であればあって当然なことです。

そのこと事態に悩み、自分を責めても、煮詰まってしまうだけでしょう。

例えば、施設によくある場面です…。

同僚が風邪で休み、自分一人で十数名の利用者の対応している時に、あっちでもこっちでもナースコールが鳴る…、目の前の利用者はさっきから何度も同じことを聞いてくる…、隣を見ればお茶をこぼしている…、パニクッテいる時に課長から呼ばれた…、そんなときは、誰もがイライラしてしまうものです。

イライラする感情さえもすべて受け入れ“だから、自らはこのように対応していこう!”と切り替え、対応していく能力も必要なのです。

大変むずかいことなのですが、“人の痛みを知る”“他を責めない”といった姿勢が重要なのです。

誰しも、怒りたいときは怒るし、嬉しいときは喜ぶのです。

人の感情には差が無いのです。

この当たり前の感情を理解すれば、いろいろ場面で悩まずに楽になれるのではないのでしょうか。

さらに、人に傷つけられたという気持ちが、自らも知らず知らずのうちに人に傷をつけているのだと気づきことができれば、人を許すことができるのでしょう。

“人の痛み”を知れば“人を許す”ことができるのです。

これはあらゆる困難を切り抜ける大きな武器となるのです。

人間の生活すべてにかかわることは人間を追求することなのです。

自らの知識や経験を活かせることができる仕事なのです。

ですから、仕事に就いたからといって、できるだけ早く福祉や介護の知識の多くのことを身に付けようと考えなくてもいいのです。

福祉や介護の仕事は何より実践です。

現場で行動できなければ、知識も生かされません。

また、現場で働き始めれば、いやでも知識は身に着いてきますし、自らも勉強しなければと、自然に思うようになります。

人の生活を考えてみてください。食事をし、入浴し、排泄し、就寝するだけでなく、余暇があり、趣味を楽しんだり、勉強したりしますね。

福祉は、その生活すべてにかかわっているのです、特別なことではないのです。

ですから、この仕事に就く人は、自らの狭い知識のみでではなく、幅広い知識を身に付けようとする姿勢が大切なのです。

音楽を学んできて、ピアノやギターを弾ける人は、伴奏しながら一緒に歌を歌えば良いし、歴史を学んできた人は、郷土の歴史や文化について話をすれば、コミュニケーションの手段としていろいろ活用できるはずです。

私も、高齢者施設に転職したての頃は、なかなかうまくなじめないお年寄りとの会話に困っていた時もありました。

専門書を見ても解決できることではないのです。

そんな時に、そのお年寄りの故郷の話をしたところ、会話が弾み、それから関係がスムーズになったのです。

専門書の知識より、ちょっとした雑学の方が、人間関係に役立つことが多いのです。人間を相手にする仕事である以上は、どんな時でも、職場では明るく元気な態度で対応しなければなりません。

経験と努力でそれができるようにならなければならないのです。

しかし、真面目な人ほど、燃え尽き症候群になってしまうリスクが高くなってしまいます。

そのようなことにならないためにも、心がけなければならないことがありますそれは…。

◎多くの友人を持ちましょう。

よき師、よき友に巡り合うことは、人生の中で最大の宝物だと私は確信しています。

そして、友人の悩みを聞いたり、相談に乗ったことは誰にもあるはずです。

これまでの人生で、多くの友人を持ち、多くの悩みに接した人は、それだけで、優しいよき援助者になれるのです。

◎外に向けて、幅広い活動をしましょう。

施設内の人間関係のみで行き詰ってしまうと、視野が狭くなり、一般社会から乖離してしまう恐れがあります。

他の施設の情報はもちろん他業種の一般常識も貪欲に吸収するような努力が必要で「井の中の蛙」「一般社会の常識は介護施設の非常識」と言われないためにも…。

⑩外国人介護福祉士の受け入れで変化はありますか。

さまざまな問題を抱える福祉・介護事業ですが、最近の話題としては「外国人労働者」受け入れ問題がクローズアップされました。

不況で就職難が常に心配されますが、日本は他の国には類を見ない“高齢化”が急速に進んでいる国です。

労働人口が減り、恒常的な人手不足になることが確実視されています。

特に慢性的な人手不足に悩んできた福祉・介護の現場では、2008年から「外国人労働者受け入れ」を制度化しました。

すでにフィリピンやマレーシアから、日本での介護福祉士や看護師を目指して1,000名近い方たちが来日し、福祉・介護、医療の現場で働いています。

コミュニケーションが大切な介護の現場でどこまで浸透し、どんな結果をもたらすか、未知数ですがポジティブに考え外国の方の真面目さに期待しましょう。

何より、昔から閉鎖的な島国日本において、外国人の受け入れ、国際化ということは、国の責務であり、国際的な貢献の意味でも重要なことだと思います。

⑪これからの成長がより増す福祉・介護の分野です。

これからの成長産業「3K」として、環境、観光、介護(福祉)の分野が挙げられています。

その中でも、地味ではありますが最も間違いなく成長を続けるのが福祉・介護の分野だといえます。

それは、福祉・介護分野の特殊性にあると考えます。

高齢者や障害者を対照とする仕事であることです。

これまではその特殊性がマイナスの面だけがクローズアップしていましたが、これからはその特殊性ゆえのプラス面が大きくいかされることになるのではないかと思います。

それは環境や観光等は誰でも参入しやすい分野で、急激に伸びるかもしれませんが、やがて飽和状態となり、成長が鈍くなることになりかねません。

福祉・介護分野は地味ですが、少子高齢化が進行する日本の現状を考えると、今後20年から30年は少なくとも成長し続けていくことは間違いありません。




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