できなくなったことを嘆くよりも、できることを探して、一緒に楽しみましょう
彼女が働くグループホームには、入所当時は歩いてレストランまで一緒にご飯を食べていけたけれども、今では外出は車いすで、食事も介助が必要になってしまったという利用者さんが複数いるそうです。
お年寄りは、一度身体能力機能が低下し始めると、あっという間に衰えてしまいます。
職員は何とか機能を維持させようと努力していますが、老化による衰えはどうしょうもありません。
ですが、だったら違う機能を使えばとか、他にできることは何かないかと、いろいろ試して見ると、皆さんたちは意外とできることがあるのが分かりました。
最近、彼女が驚いたのが、食事も排泄も介助なしでは何もできないという入居者に試しに筆を持たせてみたら、ちゃんと字を書いたことだそうです。
それは、「ある日、一日中雨で散歩に行けなかったので、皆でお習字することにしたのです。その中の一人の入居者は、いつも車いすに座ったままで、見ているかどうかも良く解からない人に、『やってみて』と、筆を持たせたところ、自力で字を書いたんです。これにはびっくりして写真を撮りまくり、休み中の職員全員にメールで送ったのです(笑い)」。
「認知症だから、車いすだから、高齢だからと、できない条件を挙げていてばかりでは、その人にふさわしい介護ができないのです。ですから、どうしたらできるのか、できないならどうするのかを、よく考えてサポートしたい」と彼女は言います。
「自力で歩けなくても車いすで外出できるし、普通のご飯が食べられなくても、お粥だったら食べられるかもしれません。機能が低下するのを嘆くのではなく、今、この瞬間に使える機能があることを喜んだ方が良いのです。お習字の場合のように、毎日一緒にいる私でさえ気が付かない能力がまだたくさん残っていると信じているので、それを引き出して、その人らしい生活を1日でも長く送って欲しいですね」。
今できること、今の入居者さんにできることをお互い全力で出し切って、毎日が特別な日になるように頑張っているH.Uさんに、介護の仕事を続けられる秘訣を聞いてみました。
「私は、よく遊ぶことです。遊んで気分を開放すれば、翌日にはまた、元気に皆さんのお世話をする気力が戻ります。お世話するお年寄りに元気であって欲しいのであれば、まず自分が元気でなければならないのです。介護の技術や家事技術は後からついてくるから大丈夫です。それより挨拶が大切です。毎朝ニコニコと笑顔で挨拶できれば、介護の仕事は続けられます。それでも辛くなったら介護の現場から離れてもいいのです。でも一度この仕事経験された方は必ず戻ってきます。それくらい魅力的な仕事ですよ」。
コメント