◇施設のあらまし/身体障害者や知的障害者に必要な治療・訓練を行なう更生施設。各障害に合わせて肢体不自由者更生施設、視覚障害者更生施設、聴覚・言語障害者更生施設、内部障害者更生施設、知的障害者更生施設があります。
◇職員の内容と資格/○職員…施設長、事務員、生活支援員(相談員)、作業指導員、介護職員、看護職員、機能訓練指導員、心理職員、医師、栄養士、調理員など。○資格等…社会福祉士、社会福祉主事、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、手話通訳士、言語聴覚士、臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、医師、管理栄養士、栄養士、調理師など。
※職員・資格は事業所で必須の人員でありません。事業所によって違いがあります。
●障害者のための各施設です。
身体障害者・知的障害者は、旧障害者福祉法に基づいて設置された施設です。
基本的な機能訓練と障害の程度や能力に応じた社会生活訓練や職業訓練、健康管理指導を行い、障害者の能力や目的に応じた更生を支援していきます。
通所型と入所型があり、両方を併設しているところもあります。
障害者更生施設は障害の内容によって以下のような施設に分けられます。
27‐1.肢体不自由者更生施設(通所・入所)
肢体不自由者が入所あるいは通所して、社会的更生のために必要な医療・知識・技能・訓練を提供する施設です。
対象者は、18歳以上(場合によっては15歳以上)で基本的に身の回りのことができる肢体不自由者です。
施設では社会生活への参加に向けて、理学療法、作業療法、運動療法を中心に、生活訓練や職能訓練です。
職能訓練とは、その仕事をするための力を養うための訓練で、手工芸や自立に必要な技術、パソコン操作、可能な人には自動車運転の指導もします。
その他に、施設での生活がより充実したものになるように、旅行や社会見学、年中行事、誕生会、スポーツ大会なども開催されます。
また、入所型の施設の場合は24時間体制で、スタッフは交代制で勤務します。
しかし、近年では通所型施設が増加しており、勤務は日中が主になります。
入所者の利用できる期間は、原則3ヵ月から1年ですが、特例で6ヵ月の延長が認められています。
27‐2.視覚障害者更生施設(通所・入所)
この施設は、何らかの理由で中途から視力に障害を持ってしまった方たちが自立と社会復帰するための支援をする施設です。
入所または通所で訓練を受けることができます。
訓練の内容は「生活訓練課程」と呼ぶ、日常生活に必要な歩行、点字、パソコン操作、生活訓練、調理訓練、ロービジョン(見えにくい状態)訓練などが中心になります。
訓練を修了した後は、家庭に戻って社会復帰、あるいは「理療教育課程」と呼ぶ、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師などになるための資格取得を目指す職業訓練を受けていくことになります。
両方の機能を持つ更生施設もあり、自立への足掛かりとなる支援をしています。
また、年間を通してさまざまなレクリエーションやクラブ活動なども行なわれ、心理面のケアも重要な仕事となっています。
入所期間は「生活訓練課程」がおよそ1年、「理療教育課程」が2~5年です。
27‐3.聴覚・言語障害者更生施設(通所・入所)
聴覚・言語障害者が通所・入所し、更生に必要な訓練を受ける施設です。
社会の中で自立して生活していくための生活訓練や職能訓練を実施しながら、あらゆる援助を行ないます。
専門医による治療や健康診断、機能回復のための診断や訓練を中心に、基礎学力や豊かな社会性を身に付けるための学習、将来の就労支援のために職場実習やパソコン操作、必要に応じて職場見学なども実施します。
その他、スポーツやクラブ活動、心理相談など、身体や心を豊かにするためのケアをしていきます。
入所期間は原則1年ですが、特例で延長することが認められています。
期間は特に定めていません。
27‐4.内部障害者更生施設(通所・入所)
この施設は、心臓、肝臓、呼吸器、膀胱、直腸、小腸、HIVなどの内部機能の障害者が、自立して社会参加するための支援をする更生施設です。
入所または通所で、健康回復・維持と生活支援、職業訓練、自立訓練を行なうことを目的としています。
入所期間は1年ですが場合によっては延長も認められることもあります。
職業訓練では、経理、ビル管理、手芸、農園芸、印刷、コンピュータなど、社会生活での自立に向けた実践的な内容になっています。
なかには臨床心理士になるための訓練を行っている施設もあります。
訓練の他にも、施設での生活をより充実させるため、レクレーションやイベント、就職面接会なども開催しています。
日常生活においては、自立して社会生活を送ることを目的としたプログラムが組まれています。
27‐5.知的障害厚生施設(通所・入所)
知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、自立と社会参加を支援する施設です。
施設では、基本的な生活習慣を身に付けるための食事や入浴、洗濯や掃除といった自己管理、そして利用者の情緒を安定させ、社会生活に積極的に参加するために必要なことを取得させます。
社会生活に適応できる力を養うために、買い物や地域行事などの参加をさせます。
施設の日常は、できるだけ一般の家庭と同じように、起床、食事、入浴、睡眠といった生活リズムで、職場実習や施設内作業などの自立に必要なプログラムが盛り込まれています。
また、行事や各リクリエーション、クラブ活動なども行なわれ、楽しむことから心の育成を行なっていきます。
これらの総合的な取り組みにより、家庭復帰、社会進出を目指しいく施設です。
●働いているのは、相談員や指導員が中心的なスタッフです。
それぞれの更生施設で、どのようなスタッフが働いているのか説明します。
説明の中に出てくる「生活支援員」は、生活全般にかかわる施設の中心的な存在です。
採用時の絶対条件ではありませんが、社会福祉士や社会福祉主事の資格を持つ人が求められています。
また「作業指導員」と「職業指導員」は、利用者の自立に向けた職業指導を行なうスタッフです。
スタッフは、その指導する業務に精通し、経験を積んでいるプロフェッショナルで、社会福祉主事の任用資格を持つ人が多いようです。
27‐1.肢体不自由者更生施設(通所・入所)
施設長、事務員、医師、栄養士、調理員などの他に、生活支援員や理学療法士は、個々に応じた技術習得を支援するスタッフで職業指導や生活訓練、日常生活全般を支援します。
こうしたスタッフが協力しながら、利用者の機能の維持と回復に努めています。
入所型施設の場合は24時間体制で、日勤と夜勤の交替で勤務しますが、理学療法士、作業療法士などは日勤です。
最近は通所型の施設が増加しており、その勤務は日勤です。
27‐2.視覚障害者更生施設(通所・入所)
この施設では生活支援員、作業指導員といった施設生活における支援スタッフの他、医師や看護師、機能訓練士などの視力障害の治療・訓練を行なうスタッフ、職業指導員として指導するあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が働いています。
入所型施設は24時間体制で、交替で勤務します。
もちろん施設長、事務員、栄養士、調理員などのスタッフも働いています。
通所型施設の場合は日勤です。
27‐3.聴覚・言語障害者更生施設(通所・入所)
特に言語聴覚士は聴覚・言語治療のスペシャリストで欠かせない存在です。
また施設長や事務員、栄養士、調理員、医師、嘱託医、生活支援員職業指導員などが働いていますが、手話や口話の知識が必要とされることは間違いありません。
入所型施設は日勤と夜勤の交替制で24時間体制での勤務をします。
通所型施設は日勤勤務で、また、入所・通所の両方を併設している施設もあります。
27‐4.内部障害者更生施設(通所・入所)
この施設では、施設長、事務員、栄養士、調理員、医師をはじめ、理学療法士、作業療法士が働いており、内部障害者に対応した訓練内容を提供します。
その他に職業指導員、心理判定員、職能判定員、保健師、看護師も働いています。
内部障害者向けの食事を管理する栄養士も重要な役割を担っています。
内部障害者は、外見から判断できない障害を持つ人たちです。
一見すると健常者に見えても、身体の内部に大きなハンディを持ち、多くの苦しみを抱えています。
ですから、この施設で働くスタッフには、より深い洞察力と理解が求められます。
医療的管理に重点を置いた施設なので、入所型の場合は24時間体制でシフトを組んで勤務します。
また通所型を併設しているところもあります。
27‐5.知的障害者更生施設(通所・入所)
この施設では、施設長、事務員、看護師、医師、栄養士、調理師などのスタッフが働いていますが、特に生活支援員は利用者と密接にかかわるスタッフです。
日中活動から各種行事など、利用者の生活全般を支援していきます。
可能な限り、個々の能力や希望に合わせた支援が求められる重要な仕事ですが、利用者の成長と自立に立ち会っていくことのできる、やり甲斐のある仕事です。
入所型施設は24時間体制で勤務します。通所型は日勤勤務です。
また、入所型・通所型の両方を併設しているところもあります。
●これらの施設の将来は、法律の変更で制度のあり方に変化が起きることとなります。
2006年に施行された障害者自立支援法によって、これらの障害施設のあり方は変化の時を迎えています。
前述したように、身体障害者、知的障害者、精神障害者それぞれに分けられていた障害者のための施策が、一つにまとめられことになりました。
その結果、これまで複雑に分けられていた33種の事業体系が、6事業に改革され、利用する人たちにわかりやすく再編されていくことになっています。
現在、順次進められていますが、しかし、障害者自立支援法の問題点が指摘されたため、民主党政権は同法を廃止し、新たな制度を模索することになり、2010年1月より「障害者制度改革推進会議」において議論が進められています。
しかし、各施設では新制度へ移行し、新たなサービスを取り入れるところも増えてきています。
例えば、新たに「地域生活用具給付事業」が創設され、相談支援、コミュニケーション支援、日常生活給付支援、移動支援といった事業が、地域や利用者の特性に合わせて展開されることになったため、こうした新しいサービスに対応する施設もあります。
今、利用者を第一に考えながら、新しい時代への対応が迫られている障害者更生施設ですが、制度の変化と同時に新しい成長の時を迎えています。
法律の改正に注意をしながら、各施設の動向にも注意しましょう。