明日は、一緒にご飯が食べられないかも知れないから、今、この瞬間を楽しんでほしいのです。その1

福祉・介護の現場…仕事の魅力と現実

次の方は、東京の福祉専門学校を卒業と同時に介護福祉士の資格を取得、2008年より、グループホームに勤務している女性介護福祉士のH.Uさんです。

彼女が勤務するグループホームは、地元の認知症の高齢者を対象とした小規模な生活の場で、少人数(5~9人)を単位とした共同住居です。

(日中は利用者3名に対して職員1名設置。夜間は1名)が入居者をサポートしながら毎日の食事の支度や掃除、洗濯などを行なうなど、家庭的で落ち着いた雰囲気の施設です。

◇H.Uさんの1日/08:30=出勤。08:45=リビング、トイレ、居室などの掃除。朝食が終わっていない入居者の食事介助など。09:30=夜勤者との申し送り。10:00=お茶だしとバイタルチェック。10:30=レクリエーション、散歩など。11:30=トイレ誘導、昼食準備。12:00=昼食介助、個人記録の記入。12:30休憩。13:15=トイレ誘導、昼寝準備、午後のリクリエーション準備など。15:00=おやつ、個人記録の記入。16:30=夕食準備。17:00=夕食介助。17:45=終業。

●グループホームの入居者は私の家族です。

「このグループホームにいるみんなが、私の家族だと思っていますから、イヤなことを言われたらイヤだと言うし、面白いことがあれば、一緒にゲラゲラ笑っていますよ。家族ですからね、遠慮なんてしません」と言っています。

まだ20代半の彼女ですが、ストレートなそんな言葉の端々に介護に関しては熱い思いが感じられます。「そう、だって天職ですから(笑い)」。

H.Uさんが介護の仕事をしようと決めたのは、高校卒業直前のことです。

それまではずっと美容関係の学校へ行くつもりで、学校の先生も友人たちもみんながそう思っていた、とH.Uさんは言っています。

「今でもおしゃれするのが好きで、マニキュアやメイクも大好きです。高校時代はカリスマ美容師とかがもてはやされていたこともあり、美容関係にあこがれる人が多かったですね。そういった道に進んだ友人も多かったです」

きれいになる仕事をしたいと未来を描いていた彼女が、なぜ、突然、介護の仕事に進路を変えたのでしょうか。

それは、「ちょうど介護保険が始まった頃です。特別養護老人ホームに入っていた私の祖父が亡くなったのですが、その亡くなる1週間ぐらい前に突然『風呂に入りたい』言い出したのです。その希望を老人ホームの職員さんがかなえてくれたんです。それも夜中の2時ぐらいでした。このことはお葬式の後に知ったのですが、知った瞬間に『介護職員ってかっこいい、もう将来はこの道しかない』と、進路を介護に変えました。また、ホーム入所の時にお世話になったケアマネジャーさんがとてもいい方で、この方のおかげで、あまりいい印象のなかった老人ホームの見方が変わりました」と、語っています。

老人ホームの介護職員に心を動かされた彼女ですが、いったいどういったところが、“かっこいい”と映ったのでしょうか。

「先がほんとに短いおじいちゃんの風呂に入りたいという最後の願いさえも、家族はかなえてあげることができないのに、この人たちはそれをやってくれたのです。おじいちゃんが大好きだった私には、介護職員の人がスーパーマンみたいに思えました」「突然の進路変更に周囲の人たちはびっくりし、当然、反対もされましたが、それを振り切って介護の専門学校に入学したのです」。

「しかし、恋人の死、さらに親しかった先輩の死と立て続けてショックなことが起こり、うつ状態になり家から一歩も出られなくなり、はりきって通い始めた介護学校を1年間休学することになってしまいました」。

「何もかもどうでもよくなり、学校を辞めるつもりでした。でも担当の先生がどうしても辞めさせてくれなかったのです。その時には復学は絶対無理と思っていましたが、何かと復帰できました。今では、退学に最後まで反対してくれた先生には感謝しています」。

復学できるようになったきっかけは訪問介護に行った先のおじいさんだったのです。

彼女は続けます。

「休学中に離婚して実家に戻っていた友人と一緒に、ホームヘルパー2級の資格を取ったのです。2人とも学歴もキャリアもないからとりあえず取っておこうか、という軽い気持ちで、その時は、特に介護の仕事に就こうとは思っていなかったのですが、1ヵ月ぐらいで資格が取れたので、学校には行かず、訪問介護サービス事業所で、パートで訪問介護員として働いていました。その訪問先であるおじいさんに出会い、自分の苦しみを理解してもらったという感じで、何かホームヘルプに行って、私がヘルプされたような感じでした(笑い)」。

このおじいちゃんのためにも、自分はもう一度介護のことをきちっと勉強して、知識と技術を身に付けようと考えて、彼女は担任の先生のサポートもあって無事復学し、翌年の卒業試験をクリアして、介護福祉士の資格を取得しました。

卒業後は引き続きパート勤務していた事業所で正職員として働き、責任を負うような立場に就きましたが、もともとグループホームで働きかったこともあり、今の職場に移ったそうです。




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